ファクタリングの仕訳と消費税処理を完全解説|課税・非課税の区分と正しい勘定科目を実例で紹介
資金繰りを改善する手段として、ファクタリングの利用は中小企業を中心に年々増えています。売掛金を早期に現金化できるため、急な支払い対応や運転資金の確保に有効な選択肢です。
しかし、実際に会計処理を行う段階になると、多くの経理担当者がつまずくのが**「消費税の扱い」**です。
ファクタリングの仕訳を行う際に、
- 「ファクタリング手数料には消費税がかかるのか?」
- 「売掛金を譲渡したとき、消費税の計上はどうすべきか?」
- 「消費税区分を課税・非課税のどちらにすればよいか?」
といった疑問を抱えるケースが非常に多いのです。
この混乱の主な原因は、ファクタリングが**「融資ではなく債権譲渡」**である点にあります。表面的には現金が入るため「融資のように非課税だろう」と誤解されがちですが、実際の消費税の対象は「ファクタリング手数料」であり、債権譲渡そのものではありません。
つまり、ファクタリングにおいて消費税が発生するのは「売掛金の譲渡行為」ではなく、ファクタリング会社の提供する“債権買取サービス”に対して支払う手数料部分なのです。
この微妙な違いを理解していないと、
- 消費税申告での課税区分ミス
- 税務調査での修正申告リスク
- 会計上の損益ずれ
といったトラブルにつながる可能性があります。
この記事では、
- ファクタリングにおける仕訳の基本構造
- 手数料部分の消費税処理の正しい考え方
- 実際の仕訳例(2社間・3社間ファクタリング)
- 消費税申告上の注意点とよくあるミス
を、実務担当者にもわかりやすく解説します。
この記事を読み終えるころには、ファクタリングに関する消費税の取り扱いを正しく理解し、仕訳上のミスを防ぐことができるようになります。
ぜひ、参考にしてください。
目次
ファクタリングでは「手数料のみ課税」― 債権譲渡自体は非課税
結論から言えば、ファクタリング取引における消費税は「手数料部分のみ課税」、債権譲渡そのものは非課税です。
ファクタリングの本質は「売掛債権の譲渡」であり、金融機関からの借入ではありません。つまり、融資とは異なり、「お金を貸して利息を取る行為」ではなく、「将来受け取る売掛金を割引価格で買い取ってもらう」という債権の売買行為です。
このため、消費税の課税対象となるのは「ファクタリング会社が提供する役務(サービス)」、すなわち債権買取の対価として支払う手数料部分に限定されます。
したがって、仕訳上の基本構造は以下のようになります。
| 項目 | 消費税の課税区分 | 仕訳上の位置づけ |
| 売掛金の譲渡(債権売却) | 非課税取引 | 売掛金の減少処理 |
| ファクタリング手数料 | 課税取引 | 支払手数料(消費税対象) |
| 入金された現金 | 非課税 | 売掛金譲渡代金として計上 |
たとえば、売掛金100万円をファクタリング会社へ譲渡し、手数料5万円(うち消費税5,000円)を支払った場合、
仕訳は以下のようになります。
(借方)現金預金 950,000 / (貸方)売掛金 1,000,000
(借方)支払手数料 50,000(課税) /
このとき、支払手数料部分にのみ消費税(課税仕入)を適用し、売掛金の譲渡部分は消費税の対象外(非課税)となります。
つまり、ファクタリングを会計処理する際は、「現金の流れ」ではなく「取引の性質(役務提供 vs 債権譲渡)」で課税対象を区分することがポイントです。
この原則を理解していないと、以下のような誤りが起こりがちです。
- 売掛金の譲渡額全体に消費税をかけてしまう
- ファクタリング手数料を「支払利息」として処理し、消費税計上を漏らす
- 課税仕入の仕入税額控除を適用し忘れる
こうしたミスを防ぐためには、取引ごとに「課税」「非課税」を明確に分けて仕訳することが不可欠です。
関連記事:ファクタリング利用時の消費税処理|課税・非課税のポイントと仕訳例
なぜファクタリング手数料は課税で、債権譲渡は非課税なのか
ここでは、なぜファクタリングの仕訳において「手数料のみ課税」「債権譲渡は非課税」となるのかを、
税法・会計・実務の3つの観点から詳しく解説します。
税法上の理由 ― 「資産の譲渡」と「役務の提供」の区別
消費税法では、課税の対象を以下のように定義しています。
「国内において事業者が事業として行う資産の譲渡・貸付け・役務の提供に対して課税される」(消費税法第4条)
ここでいう「資産の譲渡」には、一般的な商品販売や有形固定資産の売却が含まれます。しかし、売掛債権などの金銭債権の譲渡は“非課税取引”に分類されます。
なぜなら、債権譲渡は「金銭債権という無体財産権の移転」であり、消費や役務の提供に該当しないからです。
したがって、ファクタリングにおいて「売掛金の譲渡部分」には消費税は課されません。一方、ファクタリング会社が提供する「債権買取サービス(事務処理、債権管理、リスク負担など)」は、明確に**役務提供(サービス)**として分類されるため、手数料部分が課税対象となります。
つまり、
- 債権譲渡:資産の移転 → 非課税
- 手数料:役務の提供 → 課税
という二重構造を理解することが、正しい仕訳処理の基礎となります。
会計上の理由 ― 「金融取引ではなくサービス対価」
融資の場合、借入に対する利息は「金銭の貸付け」に該当し、消費税法上の非課税取引に分類されます。しかし、ファクタリングは「債権の買取り」であり、金銭の貸付けではないため、支払う手数料は「サービスの対価」として課税対象になります。
会計的にみると、ファクタリング会社は次のようなサービスを提供しています。
- 売掛金の与信調査
- 買取審査および事務処理
- 売掛金の入金管理
- 取引先への債権通知・管理業務
これらはすべて「事務代行・信用補完サービス」としての性質を持ち、その対価である手数料には消費税が課されます。
一方、売掛金そのものの譲渡(売買)は資産移転であり、課税対象外。この区別が、仕訳時の「課税仕入」「非課税仕入」の線引きを決定します。
実務上の理由 ― 消費税申告と仕入税額控除の正確性
ファクタリング手数料を課税仕入として正しく処理することは、仕入税額控除の適用にも関係します。
課税仕入として認識すれば、支払った消費税分を申告時に控除できるため、企業にとっては実質的な税負担を軽減できます。
もしこれを誤って「非課税」として処理した場合、本来控除できるはずの消費税を見逃してしまい、税務上の不利益を受ける可能性があります。
また、逆に「債権譲渡部分」にまで消費税をかけてしまうと、課税区分の過大計上となり、税務署から修正申告を求められるリスクも発生します。
つまり、ファクタリングの仕訳を正しく行う目的は、単に帳簿上の整合性を保つだけでなく、税務上の損得を正確に反映させることにもあります。
2社間と3社間での違い
ファクタリングには「2社間」と「3社間」がありますが、消費税の課税対象はどちらでも同じです。
| 区分 | 消費税の扱い | 理由 |
| 2社間ファクタリング | 手数料部分のみ課税 | サービス提供に対する対価として |
| 3社間ファクタリング | 手数料部分のみ課税 | 債権譲渡は非課税のため同様 |
ただし、2社間ではファクタリング会社が売掛金回収を代行するため、実務的には「事務処理料」や「管理費」などの名目で請求されることがあり、これらも同様に課税対象になります。
税務上の整理表
| 項目 | 内容 | 消費税区分 |
| 売掛金譲渡代金 | 売掛金の売却代金 | 非課税取引 |
| ファクタリング手数料 | サービス対価 | 課税取引(仕入税額控除可) |
| 融資利息 | 金銭の貸付け | 非課税取引 |
| 債権譲渡登記費用 | 司法書士報酬等(外注) | 課税取引 |
このように、「債権譲渡=非課税」「手数料=課税」という二層構造を整理しておくと、どの勘定科目にも迷わず対応できます。
ファクタリング仕訳の具体例 ― 消費税処理を正しく区分する
ファクタリングの消費税処理を誤る原因の多くは、「手数料部分の課税」「債権譲渡部分の非課税」の線引きを曖昧にしてしまうことにあります。
ここでは、2社間・3社間それぞれの取引を仕訳で明確に見ていきましょう。
2社間ファクタリングの仕訳例
取引内容:
売掛金1,000,000円をファクタリング会社に譲渡し、
手数料50,000円(うち消費税5,000円)を差し引かれて、現金950,000円を受け取ったケース。
仕訳:
| 日付 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
| 実行日 | 現金預金 | 950,000 | 売掛金 | 1,000,000 | 売掛金をファクタリングで譲渡 |
| 同上 | 支払手数料(課税) | 45,455 | 仮払消費税 | 4,545 | 手数料の消費税処理(10%) |
ポイント:
- 売掛金の譲渡部分(1,000,000円)は非課税取引。
- 手数料部分(50,000円)のうち、消費税分(4,545円)は**課税仕入(控除対象)**として計上。
- 「支払手数料+仮払消費税」の形で記帳するのが正確です。
関連記事:ファクタリング仕訳の正しい処理方法|売掛金の扱いと手数料の会計処理を徹底解説
3社間ファクタリングの仕訳例
取引内容:
売掛金2,000,000円をファクタリング会社に譲渡し、
取引先の承諾を得て、手数料80,000円(うち消費税8,000円)を差し引かれて現金1,920,000円を受け取った場合。
仕訳:
| 日付 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
| 実行日 | 現金預金 | 1,920,000 | 売掛金 | 2,000,000 | 売掛金をファクタリング会社へ譲渡 |
| 同上 | 支払手数料(課税) | 72,727 | 仮払消費税 | 7,273 | 手数料の消費税処理 |
ポイント:
- 3社間でも消費税の考え方は同じです。
- 手数料に含まれる消費税は課税仕入として処理し、仕入税額控除が可能です。
- 売掛金は譲渡時点で消滅します(自社では入金を受けず、売掛先が直接支払)。
ファクタリングを費用処理するケース(損益計算書上の表示)
ファクタリング手数料は「販売費及び一般管理費」に含めて表示します。
勘定科目の例:
- 支払手数料
- ファクタリング手数料
- 業務委託費(社内区分上この科目を使う企業もあり)
仕訳例(まとめ表示)
(借方)支払手数料 45,455
(借方)仮払消費税 4,545
(貸方)現金預金 50,000
※ 税抜経理方式の場合。
税込経理方式を採用している場合は、
(借方)支払手数料 50,000 / 現金預金 50,000
と記帳します。
ファクタリングにかかるその他費用の消費税区分
| 費用項目 | 内容 | 消費税区分 |
| ファクタリング手数料 | 債権買取サービス対価 | 課税取引(仕入税額控除可) |
| 契約書印紙代 | 印紙税 | 不課税 |
| 債権譲渡登記費用 | 登録免許税・司法書士報酬など | 報酬部分は課税、税金部分は不課税 |
| 振込手数料 | 銀行手数料 | 課税取引 |
| 売掛金譲渡代金 | 売掛債権の売却金額 | 非課税取引 |
実務の注意点:
契約書や請求書に「内税」「外税」が明示されていない場合、
税抜経理を採用している企業では手数料を課税取引として消費税計算に含める必要があります。
よくある誤りとその修正方法
| 間違いの例 | 修正のポイント |
| 売掛金譲渡金額全体に消費税をかけた | 売掛金の譲渡は非課税。消費税は手数料部分のみ適用する |
| 手数料を「支払利息」で処理した | ファクタリングは融資ではないため誤り。支払手数料へ訂正 |
| 仮払消費税を計上し忘れた | 税務申告時に仕入税額控除が漏れる。再計上が必要 |
| 複数取引をまとめて消費税処理 | 取引単位で課税・非課税を区分しないと税務調査で指摘対象になる |
このように、ファクタリングにおける消費税処理の核心は、「手数料は課税」「債権譲渡は非課税」というルールを常に意識して仕訳することです。金額の大小に関わらず、取引の性質を見極めることが最も重要です。
関連記事:ファクタリングの仕訳は借入金じゃない!正しい会計処理と実例を完全解説
FAQ:ファクタリングと消費税に関するよくある質問
-
ファクタリング手数料に消費税はかかりますか?
-
はい。ファクタリング手数料は、課税取引(消費税対象)です。
ファクタリング会社が提供する「債権買取・管理・リスク引受サービス」に対する役務提供の対価にあたるため、
仕訳時には「支払手数料(課税)」として処理し、仮払消費税を計上します。
-
売掛金を譲渡した金額にも消費税をかける必要がありますか?
-
いいえ。売掛金の譲渡(債権売却)自体は非課税取引です。
消費税法上、「金銭債権の譲渡」は課税対象外とされています。
したがって、消費税の対象となるのは「手数料部分のみ」です。
-
ファクタリングを融資と同じように扱ってもいいですか?
-
できません。
融資の利息は「金銭の貸付け」であり非課税ですが、
ファクタリングは「債権譲渡+役務提供」の組み合わせであり、手数料部分が課税対象です。
この区別を誤ると、税務上の課税区分がずれ、申告漏れや過大計上の原因になります。
-
ファクタリング手数料を「支払利息」として処理しても問題ありませんか?
-
誤りです。
支払利息は「借入に対する利息」であり、ファクタリングは借入ではありません。
したがって、「支払手数料(課税)」として処理するのが正解です。
-
消費税の仕入税額控除はできますか?
-
はい。ファクタリング手数料は課税仕入に該当するため、仕入税額控除の対象になります。
ただし、ファクタリング会社の請求書に「消費税額」が明示されていない場合は、
課税仕入として控除できない場合もあるため注意が必要です。
-
税込経理方式と税抜経理方式では仕訳が異なりますか?
-
異なります。
- 税抜経理方式:手数料と消費税を分けて記帳(支払手数料+仮払消費税)
- 税込経理方式:合計額を「支払手数料」として処理(消費税を分離しない)
企業が採用している会計処理方法に応じて、仕訳を統一することが大切です。
-
ファクタリング契約書に「手数料50,000円(税抜)」と書いてある場合、消費税はどう処理しますか?
-
「税抜」表記の場合は、別途10%の消費税を加算して処理します。
仕訳は以下のようになります。(借方)支払手数料 50,000
(借方)仮払消費税 5,000
(貸方)現金預金 55,000
-
手数料に消費税が含まれているかわからないときは?
-
ファクタリング会社に確認するのが原則です。
請求書に「消費税額」や「課税対象金額」が明示されていない場合、
原則として税込扱い(内税)で処理しますが、仕入税額控除の根拠として請求書の明示が必要です。
-
債権譲渡登記費用にも消費税がかかりますか?
-
司法書士報酬などのサービス部分には消費税がかかります(課税)。
一方、登録免許税などの税金部分は不課税です。
請求書を確認し、課税・不課税を分けて記帳しましょう。
-
税務署はファクタリングの消費税処理をどのように見ていますか?
-
税務署はファクタリングを「資産の譲渡取引」として扱い、
債権売却部分は非課税、手数料部分は課税と判断します。
したがって、手数料の課税処理を行っていない場合、
仕入税額控除漏れまたは消費税過少申告として修正を求められる可能性があります。
-
ファクタリングを利用した場合、消費税申告書のどの欄に記載しますか?
-
- 債権譲渡代金 → 非課税売上に該当しないため記載不要
- 手数料支払 → 課税仕入として「課税仕入れの金額」欄に計上(仕入税額控除の対象)
ファクタリング仕訳の消費税処理 ― 正しい区分が経理の信頼を守る
ファクタリングは、単なる資金調達手段ではなく、「売掛債権の譲渡取引」です。見た目は融資に似ていますが、会計・税務上の扱いはまったく異なります。そしてこの違いが最も表れるのが消費税処理の部分です。
まず、結論として覚えておくべきは以下の一点です。
ファクタリングでは「債権譲渡は非課税」「手数料は課税」
この原則を押さえるだけで、ほとんどの誤りは防げます。
売掛金を譲渡して得た現金は、あくまで「資産の売却代金」であり、物やサービスの提供に対する対価ではないため、消費税の対象外です。一方、ファクタリング会社が提供する「債権買取・管理・与信・回収」などのサービスに対して支払う手数料は、役務提供に該当し、課税仕入(10%)として処理する必要があります。
この区別を怠ると、次のような問題が起こり得ます。
- 売掛金譲渡全体に消費税をかけてしまう → 過大申告
- 手数料を非課税処理してしまう → 仕入税額控除を逃す
- ファクタリングを融資と誤認して「支払利息」で処理 → 税務区分誤り
いずれも、帳簿上・税務上の整合性を損なう重大なミスにつながります。
正しい経理処理のためには、以下の3つの視点を持つことが重要です。
- 取引の性質で判断する:
現金の流れではなく、「債権譲渡か、役務提供か」を見極める。 - 課税・非課税の明確な区分:
仕訳上で「支払手数料(課税)」と「売掛金譲渡(非課税)」を別々に処理する。 - 証憑(請求書・契約書)の確認:
手数料に消費税が含まれているかを確認し、仕入税額控除の根拠を残す。
ファクタリングは資金繰り改善に有効な手段ですが、その裏側での仕訳・税務処理を正しく行わなければ、経理帳簿の信頼性を損ない、税務署からの指摘リスクを高めることにもなります。
会計処理は「スピード」よりも「正確さ」。とくに消費税のような間接税は、少額でも誤ると累積的な影響が大きくなります。今日からは、**「債権譲渡=非課税」「手数料=課税」**というルールを明確に意識し、正確で透明性の高い経理を実践していきましょう。
私たち「ふぁくたむ」はお客様に寄り添ったファクタリングをします。
「ちょっと話を聞いてみたい」方も大歓迎!
シェアする