ファクタリングのリコースとは?あり・なしの違いとリスク・会計処理を徹底解説
事業の資金繰りを安定させる手段として定着してきたファクタリング。売掛金を早期に現金化でき、最短即日入金が可能なことから、中小企業から大企業まで幅広く利用されています。
しかし、ファクタリング契約を調べていると、しばしば**「リコース(Recourse)」**という専門用語に出会います。
「リコースあり」「リコースなし」といった表記は、万が一売掛先が支払い不能に陥った場合、利用者がその債務を負うかどうかを示す極めて重要なポイントです。
契約形態を誤解したまま利用すると、思わぬ資金負担やトラブルにつながりかねません。
本記事では、キーワード 「ファクタリング リコース」 を軸に詳しく解説します。
ファクタリング契約におけるリコース条項の本質を徹底的に解説します。
次章ではまず、リコースの有無がどのように資金調達リスクを左右するのかを端的にまとめます。
ぜひ、参考にしてください。
目次
リコースの有無はファクタリング契約のリスクと責任を決定する最重要ポイント
ファクタリング契約において、「リコースあり(With Recourse)」か「リコースなし(Non-Recourse)」かは、資金調達の安全性を左右する決定的な要素です。
結論として押さえるべきは次の一点です。
リコースあり=売掛先が不払いの場合、利用者が最終的に支払義務を負う
リコースなし=売掛先が不払いでも、利用者に返済義務は発生しない
つまり、同じファクタリングでも、リコース条項があるかないかで「実質的な借入リスク」が大きく異なるのです。
リコースあり(With Recourse)
- ファクタリング会社が売掛金を買い取った後、売掛先が倒産や支払い不能になった場合、
利用者がその代金を弁済する義務があります。 - 手数料(買取料率)は比較的低めに設定されることが多いですが、
最終的な回収リスクは利用者に残るため、実質的には短期融資に近い性質を帯びます。
リコースなし(Non-Recourse)
- 売掛先が不払いになった場合でも、
ファクタリング会社がリスクを負担します。 - 利用者は弁済義務を負わないため、
会計上も売掛金のリスクを完全に移転できます。 - ただし、手数料はリコースありよりやや高めに設定される傾向があります。
結論
資金繰りを安定させたい事業者にとって、リコース条項の有無を理解しないまま契約するのは極めて危険です。
「リコースあり」はコストは低いが最終リスクを自社が背負う。
「リコースなし」はコストは高いが不払いリスクを完全に回避できる。
どちらを選ぶべきかは、
- 取引先の信用力
- 自社の資金体力
- 手数料とのバランス
を総合的に判断する必要があります。
次章では、なぜこのような違いが生まれるのか、法的背景・会計処理・資金繰りへの影響といった観点から詳しく解説します。
リコース条項がファクタリング契約に与える影響とその背景
ファクタリングは「売掛債権の売却」という点でシンプルに見えますが、リコースの有無によって契約の本質・会計処理・リスク分担が大きく異なります。ここではその理由を4つの視点から整理します。
法的構造の違い
- リコースあり(With Recourse)
売掛先が支払い不能となった場合、利用企業がファクタリング会社へ代金を返済する義務を負います。
これは実質的に「売掛債権を担保とした短期融資」に近く、法的には債権譲渡+保証契約の性質を併せ持ちます。 - リコースなし(Non-Recourse)
売掛先の支払い不能リスクをファクタリング会社がすべて引き受けるため、利用者は返済義務を負いません。
法的には純粋な売買契約として扱われ、完全なリスク移転が成立します。
会計処理への影響
- リコースありは「借入金」に近い扱いとなり、負債として計上される場合があります。
- リコースなしは売掛債権を譲渡した時点でリスクが消滅し、**売掛金減少(オフバランス化)**が可能です。
財務諸表をスリムに見せたい企業にとっては大きなメリットです。
コストと審査基準
- リコースありはファクタリング会社にとってリスクが小さいため、手数料は低め(1〜8%程度)。
- リコースなしは不払いリスクをすべて引き受けるため、手数料は高め(5〜20%程度)。
- 審査では、
- リコースありは利用者の返済能力も重視。
- リコースなしは売掛先の信用度が中心。
資金繰りと経営戦略への影響
- リコースありはコストを抑えつつ早期資金化できる一方、最終的な回収リスクは残るため、資金繰りに余裕がない企業には負担となる場合があります。
- リコースなしは手数料が高くても、不払いリスクを完全に回避したい企業には有効。
- 特にスタートアップや赤字決算の企業にとって、財務リスクを外部化できる点は魅力です。
このように、リコース条項は契約の法的性質・会計処理・資金繰り計画に直結します。
次章では、実際の利用事例を通して、リコースあり/なしがどのように企業の資金戦略に影響するのかを具体的に見ていきます。
リコースあり・なしファクタリングの活用3事例と判断ポイント
リコース条項の違いをより実務的に理解するには、実際に企業がどのように使い分けているかを見るのが一番です。ここではリコースあり/なしの事例を比較し、判断材料を整理します。
事例1:リコースありファクタリングを選んだ製造業
背景
地方の部品製造業A社は、大手自動車メーカーへの納品後、入金まで60日待つ必要があった。季節的な仕入れ資金が必要となり、短期の資金繰りを強化したい状況。
対応
- 売掛金3,000万円をリコースありファクタリングで現金化
- 手数料は**3%**と低め
- 売掛先が倒産した場合はA社が弁済義務を負う契約
結果
資金調達コストを抑えつつ、仕入れを計画どおり実施。売掛先は信用力が高く、リスクを取る判断が功を奏した。
事例2:リコースなしでリスク回避したITスタートアップ
背景
B社は複数の新規取引先を拡大中で、売掛先の信用力がまだ十分に把握できていなかった。リスクを極力避けたい状況。
対応
- 2社間のリコースなしファクタリングを利用
- 請求書総額1,200万円を即日資金化
- 手数料は**8%**とやや高め
結果
売掛先の入金遅延が実際に発生したが、B社には返済義務がなく、事業運営に影響なし。
事例3:両方を併用した成長企業
背景
急成長中のC社は、既存の安定取引先と、新規の海外顧客の両方を持つ。
対応
- 安定取引分はリコースあり(手数料3%)
- 新規顧客分はリコースなし(手数料10%)
- 資金調達とリスクヘッジを両立
結果
全体の資金コストを抑えながら、不確実な売掛金のリスクを限定できた。
費用感の比較(目安)
項目 | リコースあり | リコースなし |
手数料 | 1〜8% | 5〜20% |
不払いリスク | 利用者が負担 | ファクタリング会社が負担 |
会計処理 | 負債計上の可能性あり | 売掛金オフバランス化可 |
主な利用シーン | 信用度の高い売掛先 | 新規顧客・高リスク案件 |
判断のための実務ポイント
- 売掛先の信用度を評価
– 信用調査や取引実績を必ず確認。 - 自社の資金体力を把握
– 万一の弁済に耐えられるかを試算。 - 総コストの比較
– 手数料だけでなく、会計上の影響も考慮。 - 契約書の細部を精査
– 弁済義務の範囲、遡及期間などを明確に。
これらの事例が示すとおり、リコースの有無は「どれだけリスクを取れるか」という経営判断そのものです。
FAQ:ファクタリングのリコースに関する10の質問
-
リコースとは何ですか?
-
リコース(Recourse)は「償還請求権」を意味し、売掛先が代金を支払わなかった場合に、ファクタリング会社が利用者に弁済を求められる権利です。契約で「リコースあり」「リコースなし」を明示します。
-
リコースありファクタリングは違法では?
-
違法ではありません。民法に基づく債権譲渡契約として認められています。ただし実質的に借入に近い性質を持つため、会計処理や税務上の判断を誤らないよう注意が必要です。
-
リコースなし契約のメリットは?
-
売掛先が倒産や不払いになっても利用者が返済義務を負わないこと。リスクを完全に移転でき、財務の安定化につながります。
-
リコースありを選ぶメリットは?
-
ファクタリング会社のリスクが低いため、手数料が1〜8%程度と低く抑えられる傾向があります。売掛先が大手や公共団体など信用力が高ければ有利です。
-
会計処理の違いは?
-
リコースありは「借入金」に近い負債として計上される場合があります。リコースなしは「売掛金の消滅」としてオフバランス化できるのが一般的です。
-
スタートアップや赤字企業はどちらを選ぶべき?
-
自社の資金体力が乏しく、売掛先の信用が不確実ならリコースなしが安心。取引先が信用力のある大手でリスクが低い場合は、コスト面でリコースありも有効です。
-
手数料の相場は?
-
リコースありは1〜8%、リコースなしは5〜20%が目安です。取引額や売掛先の信用度によって変動します。
-
契約後にリコース条件を変更できますか?
-
原則できません。条件を変更したい場合は再契約が必要です。契約前に弁済義務や免責範囲を必ず確認してください。
-
2社間ファクタリングでもリコースなしは選べますか?
-
選べますが、売掛先への通知がない分、ファクタリング会社がリスクを負うため手数料は高くなる傾向があります。
-
安全な業者を選ぶポイントは?
-
料金体系が明確で口コミ評価が高く、金融庁登録や業界団体加盟のある事業者を選ぶこと。契約前に顧問税理士や弁護士への相談も推奨されます。
まとめ:リコース条項を理解して最適なファクタリング契約を選ぶ
ファクタリングにおけるリコース条項の有無は、資金調達のリスクと責任を決定づける核心部分です。
- リコースあり
- 手数料は低い
- 取引先が不払いの場合は利用者が返済義務を負う
- 会計上は借入金に近い扱いになる場合がある
- リコースなし
- 手数料は高め
- 不払いリスクはファクタリング会社が負担
- 売掛金のオフバランス化が可能
安全に利用するためのポイント
- 売掛先の信用度を必ず調査
- 自社の資金体力を正確に把握
- 契約書で弁済義務や遡及条件を確認
- 会計・税務上の処理を専門家に相談
- 複数社から見積もりを取得して比較
リコース条項は、単なる「契約条件」ではなく、経営戦略そのものです。
コストだけに注目するのではなく、資金繰りの安定性、会計への影響、そしてリスク許容度を総合的に考慮したうえで選択することで、ファクタリングはより強力で安全な資金調達手段となります。
私たち「ふぁくたむ」はお客様に寄り添ったファクタリングをします。
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