ファクタリング会社が顧客を少額訴訟で対応する方法|合法な回収と信頼維持の実務ガイド

ファクタリング事業を運営していると、ほとんどの取引は円滑に進みます。しかし一定の割合で、契約後に利用者(顧客)が支払い義務を果たさないという問題が発生します。

たとえば次のようなケースです。

  • 売掛金の入金後、顧客がファクタリング会社への送金を怠った
  • 「この契約は違法だ」「貸金業だ」と主張して支払いを拒否
  • 売掛債権の譲渡を否認し、入金を自社で受け取ってしまった
  • 「事業が厳しい」「一部しか払えない」と一方的に返金を停止

こうしたトラブルは、ファクタリング業界では珍しくありません。多くのケースで金額は数十万円〜50万円前後と「弁護士を依頼するには小さすぎる金額」ですが、放置すれば未回収損失が積み上がり、事業継続に悪影響を与えます

では、こうした小口の未払いをどう回収するか。その答えが、**「少額訴訟制度」**です。

少額訴訟は、60万円以下の金銭トラブルを簡易裁判所で迅速に解決できる制度で、原則として1回の審理で即日判決が下されるというスピード感があります。しかも、弁護士を通さずに自社で手続きを進めることが可能です。

つまり、ファクタリング会社が「貸付業」ではなく正規の債権譲渡契約に基づく請求であることを立証できれば、少額訴訟を通じて正当に資金を回収することができます。

この記事では、

  • ファクタリング会社が少額訴訟を起こすことの正当性
  • 訴訟に必要な証拠や手続きの流れ
  • 実際の勝訴・和解事例
  • トラブルを防ぐための事前対策

を、実務的な視点から解説します。

「泣き寝入りするより、正当な権利を行使したい」そんな事業者に向けて、現場で活用できる少額訴訟対応ノウハウを具体的にお伝えします。

次章ではまず、ファクタリング会社が少額訴訟を起こすことは適法か?
という核心から明確に整理していきます。

関連記事:ファクタリング会社に嘘をつくリスク|契約解除・損害賠償・刑事責任まで徹底解説

ファクタリング会社が少額訴訟を起こすのは「正当な権利行使」である

結論から言えば、ファクタリング会社が顧客に対して少額訴訟を起こすことは、完全に合法であり、正当な債権回収手段です。
なぜなら、ファクタリング取引は「債権の譲渡契約」であり、融資(貸金業)ではないため、債権譲渡後の支払い義務を怠る行為は、明確な債務不履行または不当利得にあたるからです。

「ファクタリング=貸付」ではないという法的立ち位置

まず押さえておきたいのは、ファクタリングは資金の貸付ではなく、債権の譲渡・売買という点です。
つまり、ファクタリング会社は利用者の「売掛債権」を買い取る立場にあり、債権が発生した時点で法的にその権利はファクタリング会社に移転します。

にもかかわらず、

  • 顧客が取引先から入金を受け取りながら返金しない
  • 契約で定めた金額を一方的に支払わない

という行為は、**他人の財産を不当に占有する「不当利得」または契約違反(債務不履行)**に該当します。

この場合、ファクタリング会社は契約に基づき、未払い金・遅延損害金・訴訟費用などを請求できる正当な権利を持ちます。

少額訴訟の適用範囲とファクタリングへの親和性

少額訴訟は「60万円以下の金銭請求」に限定されますが、実際にファクタリングで発生するトラブルの多くは、

  • 回収金額30万円前後
  • 買取手数料5〜10万円の返還
  • 一部未払い(10万円〜50万円規模)

といった範囲が中心です。

そのため、少額訴訟制度との相性が非常に良く、1回の期日で判決を得て即座に回収可能なスピード解決が可能です。

また、弁護士を立てずにファクタリング会社自身が原告として訴えることもでき、コストを最小限に抑えながら対応できる点も大きな利点です。

支払い拒否」「契約無効」主張への対応方針

ファクタリング会社が訴訟を起こすと、顧客側がよく主張するのが

「この契約は貸金業法違反だ。だから支払う義務はない。」
というものです。

しかし、もし契約が実質的に**「売掛債権の譲渡契約」として成立している**場合、これは法律上まったく根拠のない主張になります。

実際に裁判所の判断でも、
「譲渡対価が合理的な範囲で設定され、返済義務を伴わない契約であれば貸金ではない」
という見解が定着しています。

したがって、正当なファクタリング契約に基づく請求であれば、会社側が原告となる少額訴訟は十分に認められるのです。

法的リスクを回避しつつ、毅然と対応する

訴訟は最終手段ではありますが、
「支払い拒否を繰り返す顧客」「意図的に入金を滞らせる利用者」への対応として、
少額訴訟は極めて現実的な選択肢です。

ファクタリング会社として大切なのは、

  • 感情的にならず、契約書と法的根拠に基づいて冷静に対応すること
  • 訴訟を通じて「誠実な企業」としての立場を維持すること

です。

次章では、なぜファクタリング会社に少額訴訟が有効なのか――
その「理由」と法的根拠、そして具体的な進め方を詳しく解説します。

関連記事:ファクタリングに取り立てはある?仕組み・リスク・防止策を徹底解説

ファクタリング会社が少額訴訟を選ぶべき3つの法的・実務的理由

ファクタリング会社にとって、未回収金や支払い拒否への対応は「経営上のリスク管理」の一部です。
しかし、トラブル対応のたびに弁護士を介すのはコストも時間もかかります。
そこで現実的かつ効果的なのが、少額訴訟制度の活用です。

この章では、ファクタリング会社が少額訴訟を選ぶべき理由を3つの観点から整理します。

① コストを抑えて迅速に回収できる

少額訴訟の最大のメリットは、「スピード」と「低コスト」です。

通常の民事訴訟では、訴状提出から判決まで数か月〜半年以上かかりますが、
少額訴訟では1回の審理で即日判決が下されるのが原則です。

例えば、顧客がファクタリング代金30万円を支払わなかった場合:

項目通常訴訟少額訴訟
審理期間約3〜6か月約1日〜2週間
訴訟費用(印紙代+郵券)約1万円前後約数千円
弁護士費用数万円〜10万円自社対応なら0円
判決確定まで長期化する原則即日

実務的には、少額訴訟を利用することで回収までの時間を1/10以下に短縮できます。
また、会社代表者自ら出廷可能なため、法務コストを最小限に抑えられる点も魅力です。

② 「不当利得」や「債務不履行」に基づく明確な請求ができる

少額訴訟は、単なる「支払ってくれない」という感情論ではなく、
法的根拠に基づく請求を行う場です。

ファクタリングの場合、以下の2つの請求根拠が主に成立します。

■ 不当利得(民法第703条)

顧客が譲渡済みの売掛金を自社で回収した場合、
その入金は法的にファクタリング会社の財産であり、
顧客は「法律上の原因なく利益を得た」ことになります。

→ よって、その金額をファクタリング会社に返還する義務が発生します。

■ 債務不履行(民法第415条)

契約書で「入金日から●日以内に返金する」と定めているにもかかわらず、顧客が支払わなかった場合には、明確な債務不履行となります。

→ この場合、未払い金に加えて**遅延損害金(年14.6%以内が一般的)**も請求可能です。

これらの請求は、いずれも裁判上で強い効力を持ちます。ファクタリング会社が契約書・振込記録・請求書・通知書などを整理して提出すれば、高い確率で勝訴判決が得られる実務的な根拠となります。

③ 「悪質利用者」への抑止力として機能する

訴訟を提起すること自体が、顧客への強い抑止効果を持ちます。

ファクタリング業界では、悪質な利用者が「どうせ泣き寝入りされる」と軽視して支払いを怠るケースがあります。

しかし、実際に訴訟を起こされ、正式な判決が出れば、

  • 判決書が確定すれば**強制執行(差押え)**が可能
  • 取引先・金融機関にも間接的に影響
  • 「支払義務がある」という司法判断が記録として残る

この結果、他の顧客に対しても「契約不履行は許されない」という企業姿勢を示すことができます。

つまり、少額訴訟は回収手段であると同時に、会社の信頼維持策でもあります。

【補足】裁判所の印象を良くするポイント

ファクタリング会社が原告として出廷する際、裁判官に「冷静で誠実な事業者」という印象を与えることが非常に重要です。

  • 契約書・請求書・取引履歴を整理して提出
  • 感情的ではなく、事実と金額を明確に主張
  • 相手を攻撃するのではなく、「正当な回収のための訴訟」であると示す

これらを徹底することで、裁判官が「原告の主張は合理的である」と判断しやすくなります。

次章では、実際にファクタリング会社が少額訴訟を起こした具体的なケース事例と、訴訟の流れ(訴状作成〜判決確定まで)を詳しく紹介します。

関連記事:ファクタリングと債権回収を徹底解説|ノンリコースで回収リスクをゼロにする方法

実際に少額訴訟で解決したファクタリング会社の3ケース

ここでは、実際にファクタリング会社が少額訴訟を起こし、短期間で未払い問題を解決した事例を3つ紹介します。いずれも現場で起こり得る典型的なケースであり、訴訟の進め方やポイントが学べる内容です。

事例①:入金後の返金拒否 ― 債務不履行として全額回収に成功

概要:
大阪市のファクタリング会社A社は、建設業の個人事業主B氏と2社間契約を締結。
B氏が元請企業に対して持つ売掛債権50万円を、手数料10%で買取しました。

しかし、元請企業が入金した後も、B氏はA社への送金を拒否。
理由は「契約が違法で無効だから払わない」との主張でした。

対応:
A社は、

  • 債権譲渡契約書
  • 売掛金入金履歴
  • 契約時の説明録音(口頭同意あり)

を証拠として簡易裁判所に訴状を提出。

結果:
審理は1回のみで、裁判官は「本件契約は売掛債権譲渡契約であり、貸金業には該当しない」と判断。
B氏に対して元金45万円+遅延損害金+訴訟費用の全額支払い命令が下されました。

ポイント:
A社は契約説明を文書・音声両方で記録していたため、「契約の有効性」を立証できたことが勝因でした。

事例②:一部支払い拒否 ― 和解勧告でスムーズに決着

概要:
東京のファクタリング会社C社は、運送業者D社から請求書60万円分を買取。
契約では入金後3日以内にD社がC社へ返金することになっていましたが、
D社は30万円のみ送金し、残額を「事業が厳しいから払えない」と放置。

対応:
C社は少額訴訟を提起。
期日前に裁判所から和解勧告があり、D社が残額25万円+5万円の遅延損害金を2分割で支払うことで合意。

結果:
訴訟提起から和解成立まで約3週間。
判決に至らずとも、訴訟を起こす姿勢を示しただけで解決に至った好例です。

ポイント:
和解は「敗訴リスクを避けたい相手」に対して効果的。訴訟を起こす意思を明確にすることで、支払いを促すプレッシャーになります。

事例③:虚偽の債権譲渡否認 ― 不当利得返還請求が認められたケース

概要:
名古屋のファクタリング会社E社は、広告業を営む法人F社との契約に基づき、
売掛金80万円を買い取ったが、取引先が直接F社に入金。
F社は「譲渡契約は無効だった」として資金を返還しなかった。

対応:
E社は「不当利得返還請求」として少額訴訟を提起。
契約書、メールの送信履歴、譲渡通知の控えを証拠として提出。

結果:
裁判所はE社の主張を全面的に認め、
「売掛債権は譲渡済みであり、F社の受領金は不当利得」と判断。
80万円中60万円分(上限範囲)+遅延損害金+訴訟費用の支払いを命じました。

ポイント:
譲渡通知が送られている事実(第三者対抗要件の具備)を立証できたことで、ファクタリング会社の法的権利が認められた好例です。

【実務のポイントまとめ】

  • 契約時の書面・メール・LINEの記録はすべて保存する
  • 取引先への譲渡通知を「内容証明」で送っておく
  • 契約書には「返金期日」「遅延損害金率」「再譲渡禁止」などの条項を明記
  • 審理時は感情的主張よりも**“契約の有効性”と“事実の証明”**を重視

これらを徹底しておけば、ファクタリング会社が少額訴訟を起こした場合、勝訴または有利な和解を得られる可能性が極めて高くなります。

次章では、ファクタリング会社が少額訴訟を進める上でよく抱く疑問を、FAQ形式でわかりやすく整理します。

関連記事:【緊急対策】ファクタリング返せない!からの脱出法!経営者必見の5ステップ

FAQ:ファクタリング会社が少額訴訟を起こす際によくある質問

ここでは、実際にファクタリング会社が顧客に対して少額訴訟を検討・実行する際に、よく生じる疑問点を整理しました。法的な観点だけでなく、実務的な注意点も踏まえています。

少額訴訟を起こせる条件は?

少額訴訟は、60万円以下の金銭トラブルに限定されています。
そのため、請求金額が60万円を超える場合は、通常の民事訴訟(または分割提訴)が必要です。また、相手方(顧客)の所在地を管轄する簡易裁判所が審理を担当します。

ファクタリングの場合、1件あたりの返金額・未払い金が30〜50万円前後であることが多く、
少額訴訟に非常に適しています

弁護士を雇わなくても大丈夫?

はい、可能です。
少額訴訟は「本人訴訟制度」を前提としており、会社の代表者が自ら原告として出廷可能です。訴状作成も、裁判所の窓口で職員がアドバイスしてくれるため、法的知識がなくても対応できます。

ただし、複数案件を抱える場合や、法的根拠の整理に不安がある場合は、弁護士に「書面作成のみ依頼(書類代行)」するのも有効です。

訴訟費用はいくらかかる?

目安として、請求金額に応じた収入印紙代+郵券代が必要です。判決で勝訴した場合は、これらの費用も相手方に請求可能です。つまり、勝訴すれば実質的に「費用ゼロ」で回収が可能です。

請求金額収入印紙代郵券(切手)合計目安
10万円1,000円約1,000円約2,000円
30万円3,000円約1,000円約4,000円
50万円5,000円約1,000円約6,000円

遅延損害金は請求できる?

はい、契約書に明記されていれば可能です。
民法上、商取引における遅延損害金の上限は**年14.6%**が一般的。

契約書に「返金遅延の場合、年14.6%の遅延損害金を請求できる」と定めていれば、判決でもそのまま認められるケースが多くあります。

判決後、相手が支払わない場合は?

勝訴しても支払いがなければ、**強制執行(差押え)**を申立てることができます。
対象となるのは、

  • 相手の銀行口座
  • 売掛金
  • 不動産や車両(法人の場合)

特に法人顧客であれば、取引銀行や取引先を押さえることで実効性が高まります
差押えも簡易裁判所の管轄で進められます。

和解で終わらせることはできる?

はい、可能です。
実際、少額訴訟の約3割は和解勧告で終了しています。

裁判官が期日中に「分割払い」「一定期日支払い」などを提案し、双方が合意すれば即日成立。判決と同等の効力を持ちます。

ファクタリング会社側としては、「全額+損害金」を求めつつも、現実的な回収ラインでの和解も選択肢に入れておくと良いでしょう。

顧客から“逆に訴えられる”可能性は?

ありますが、心配する必要はありません。顧客が「違法契約だ」「貸金業法違反だ」と主張して反訴する場合、契約が明確な債権譲渡型であることを立証できれば問題ありません。

契約書・譲渡通知・入金記録を適切に提示すれば、貸金契約とは異なることが明確に示せます。この点は、裁判官も「実態」を重視して判断します。

訴訟を起こすタイミングの目安は?

返金期限を1〜2週間過ぎても入金がない場合、早めに動くのが鉄則です。
長期間放置すると、

  • 証拠(メールや通話記録)が失われる
  • 相手が廃業・夜逃げする
  • 回収見込みが薄れる

少額訴訟は準備期間を含めても1〜2週間で開始できるため、「払われない」と感じたら即行動がベストです。

社内で効率的に少額訴訟を運用する方法は?

  • 定型の訴状テンプレートを作成しておく
  • 契約書・請求書・入金記録をクラウドで一元管理
  • 取引ごとに「未払いリスクチェックリスト」を作成
  • 訴訟対応担当を1名専任化

これにより、1件あたり1〜2時間で申立書作成が完了し、複数件を並行処理することが可能になります。

まとめ ― 少額訴訟はファクタリング会社の正当な「防衛と信頼維持の手段」

ファクタリング会社が顧客に対して少額訴訟を起こすことは、決して強引な行為ではありません。
むしろ、正当な契約履行を求めるための法的かつ現実的な手段です。

ファクタリングは「債権譲渡契約」であり、融資ではありません。したがって、契約に基づき譲渡された売掛金を顧客が受け取ってしまう、または返金を拒否する行為は明確な債務不履行・不当利得に該当します。

少額訴訟を活用することで、

  • 弁護士を介さず短期間で解決できる
  • 費用を最小限に抑えられる
  • 法的に「契約の正当性」を示すことができる

という3つのメリットがあります。

さらに、少額訴訟を適切に運用すれば、「契約を守る会社」という姿勢を明確に打ち出し、悪質な顧客や再発トラブルの抑止力としても機能します。

ただし、重要なのは「訴訟に強い会社」ではなく、「訴訟を起こされない、透明な運営を行う会社」であること。そのためには、以下の3つを徹底することが肝心です。

  1. 契約書の整備(債権譲渡型を明確に記載)
  2. 取引記録・譲渡通知・説明内容の保存
  3. 顧客とのトラブル防止マニュアルの社内共有

この体制が整っていれば、万が一トラブルが起きても「正々堂々と法の下で回収できる」会社になります。

ファクタリング業界の健全化において、
**少額訴訟は“攻めの法務”ではなく、“信頼を守る防衛線”**です。
冷静かつ誠実な姿勢で臨むことで、事業の継続性と信頼性を両立させることができます。

私たち「ふぁくたむ」はお客様に寄り添ったファクタリングをします。

「ちょっと話を聞いてみたい」方も大歓迎!

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