法人成りでも創業融資は可能!個人実績を活かす審査ポイント・成功事例・必要書類を徹底解説
個人事業主として一定の実績を積み、売上や取引先が安定してくると、多くの方が次に考えるのが「法人化(法人成り)」です。
法人化すれば、節税効果や信用力の向上、人材採用の拡大など、事業を次のステージへ進めるための土台が整います。
しかし同時に、法人化のタイミングで多くの経営者が直面するのが「資金」の問題です。
「法人化したばかりでは融資を受けにくいのでは?」
「個人事業の実績は法人として評価されないのでは?」
こうした不安を感じる方も多いでしょう。
実際、法人化直後は「創業間もない企業」とみなされるため、融資の審査においては創業融資の扱いになるケースが一般的です。
つまり、法人成り後の融資は、「創業融資」と「事業継続融資」の中間的な立ち位置にあり、個人時代の実績をどう評価してもらうかが大きな鍵を握ります。
幸い、近年では日本政策金融公庫や信用保証協会が、個人事業から法人へ移行する事業者を支援する制度を整備しています。
過去の確定申告書や売上データがあれば、個人事業の実績も審査の対象として認められることが多く、法人成り直後でも創業融資を受けやすい環境が整いつつあります。
本記事では、「法人成りしたばかりの法人が創業融資を受ける方法」を中心に、審査で評価されるポイント、必要書類、成功事例、そして申請のコツまでを、わかりやすく解説します。
法人化を新しいスタートラインとするあなたに、確実に資金を引き寄せる戦略をお伝えします。
ぜひ、参考にしてください。
目次
法人成りでも創業融資は受けられる ― 個人の実績が“信用”に変わる時代
結論から言えば、法人成りしたばかりの法人でも、創業融資は十分に受けられます。
むしろ、個人事業から法人化した経営者は、実績が全くない「真の新規創業者」よりも融資で有利になるケースが多いのです。
理由はシンプルです。金融機関や日本政策金融公庫は、法人の登記日だけで判断しているわけではありません。
法人としての歴史が浅くても、個人事業主時代の売上・利益・納税実績があれば、事業の継続性と信用性が十分に評価されるのです。
たとえば、3年間個人で飲食店を経営していた人が、法人化をきっかけに店舗を増やそうと考えている場合。
金融機関は、その過去の確定申告書や売上データをもとに、「既に安定的に事業を運営している」「法人化によって成長余地がある」と判断し、創業融資を前向きに検討します。
つまり、法人成りの法人は「ゼロからのスタート」ではなく、「過去の実績を土台とした新たなステップアップ」と見なされるのです。
ただし、個人から法人へ移行する際には、審査で確認されるポイントも変わります。
特に注目されるのが、資金の使い道・法人と個人の分離・事業計画の具体性の3点です。
これらを明確に整理し、書類上で一貫した説明ができれば、法人成り直後でも高確率で融資が実現します。
重要なのは、「法人化したばかりだから無理」と決めつけないことです。
創業融資の制度は、まさにこの“法人へのステップアップ”を支援するために用意されています。
個人時代の努力を“信用”として見せることができれば、法人成りは融資における追い風になるのです。
なぜ法人成りでも創業融資が受けられるのか ― 制度と評価の変化が後押しする
法人化したばかりの企業が創業融資を受けやすくなっているのは、制度的にも金融の考え方としても「連続した事業の信用」を重視する方向に変化しているからです。
ここでは、その理由を3つの側面から見ていきましょう。
日本政策金融公庫の制度が「法人成り」を支援している
日本政策金融公庫(以下、公庫)は、中小企業や個人事業主の成長支援を目的とする政府系金融機関です。
この公庫が提供している**「新創業融資制度」や「創業支援融資」**では、法人設立から2年以内であれば「創業期」として扱われ、法人成りした企業も対象になります。
さらに、公庫は申込者の過去の経営実績を重視します。
たとえ法人としての決算がまだなくても、個人事業主時代の確定申告書や売上帳簿、取引実績を提出すれば、事業継続性の証明として評価されるのです。
つまり、形式上は「創業融資」であっても、実質的には「事業拡大融資」に近い扱いを受けるケースが多く、これが法人成り企業にとって大きな追い風となっています。
銀行や信用保証協会も「個人実績」を信用情報として扱う
金融機関や信用保証協会の審査基準も変化しています。
以前は「法人としての決算書がない=信用がない」と判断されがちでしたが、現在は個人事業主としての実績を法人の信用として参照することが一般化しています。
特に次のような要素が評価対象になります:
- 過去3年分の確定申告書(売上・利益・納税の履歴)
- 主要取引先との契約継続状況
- 継続的な売上入金実績(通帳コピーなど)
- 業務内容が法人化後も変わらないこと
このように、事業の実態が法人化後も連続している場合、金融機関は「新規創業」ではなく「実質的な事業拡大」として融資判断を行います。
つまり、法人成り企業にとっては「これまでの努力が無駄にならない仕組み」が確立されているのです。
関連記事:法人融資に必要な書類を完全解説!審査をスムーズに通すための準備とチェックリスト
政策的にも「個人保証や過剰なリスクの軽減」が進んでいる
近年、政府や金融庁は中小企業支援の一環として「経営者保証に依存しない融資」「創業期支援」の拡充を推進しています。
特に、法人成りによって個人と法人の資金を明確に分けた事業者に対しては、保証協会付き融資の保証人免除制度が適用されるケースもあります。
これにより、経営者個人のリスクを減らしつつ、法人としての信用力を高めるチャンスが生まれています。
結果として、以前よりも「法人設立直後でも安心して資金調達できる」環境が整っているのです。
このように、法人成りでも創業融資を受けやすくなった背景には、
- 政府系金融機関の柔軟な制度
- 金融機関の評価基準の進化
- 経営者支援を重視する国の政策
という3つの流れが存在します。
つまり、法人成り直後の法人は「新規事業者」ではなく、「実績をもつ新しいステージの企業」として認識される時代になっているのです。
法人成り後に創業融資を成功させた3つの事例 ― 準備と信頼構築がカギ
法人化のタイミングで創業融資を申請する場合、「個人事業時代の実績をどう示すか」「法人としての計画をどう描くか」が大きなポイントになります。
ここでは、業種や規模の異なる3つの法人の成功事例をもとに、審査突破の実践的アプローチを紹介します。
事例①:飲食業A社 ― 個人実績を「継続経営」として評価されたケース
熊本市でカフェを運営していた個人事業主Aさんは、店舗拡大のために法人化し、株式会社Aを設立。
新店舗の初期費用として日本政策金融公庫の創業融資に申し込みました。
審査では、「法人としては創業1カ月目」というハンデがありましたが、Aさんは過去3年分の確定申告書と会計データを提出。
さらに、個人時代から取引している仕入先・リース会社・顧客リストを添付し、事業の継続性を証明しました。
結果、公庫の担当者からは「法人化しても実態は継続経営と判断できる」と評価され、1,000万円の創業融資が無担保・無保証で実行。
法人としての初年度から順調に売上を伸ばし、今では複数店舗を展開しています。
事例②:建設業B社 ― 法人成りを“信用力強化”として説明
福岡県で個人事業として建設工事を請け負っていたBさんは、元請け企業からの要請もあり法人化。
法人化を機に、車両・重機の購入資金として信用保証協会付きの創業融資を申請しました。
融資申請時には、
- 個人事業時代の請負契約書
- 発注元との継続取引証明書
- 法人化後の事業計画書(今後3年の売上予測)
を丁寧に提出。
これにより、「法人成りはリスク回避ではなく、事業の安定と成長を目的とした前向きな決断」と判断されました。
結果、保証協会付きで2,000万円の融資が承認され、経営基盤を強化することができました。
事例③:ITサービスC社 ― データで信用を可視化したスタートアップ型法人成り
東京都内でフリーランスのエンジニアとして活動していたCさんは、法人化を機にIT開発会社を設立。
クラウドシステム導入と採用拡大のため、日本政策金融公庫の創業支援融資を活用しました。
Cさんが提出したのは、
- 個人事業時代の請求書・入金履歴をまとめたデータ表
- 契約継続中の法人顧客リスト
- 法人化後の新サービスの事業計画書
これにより、実績の裏づけと今後の成長性が明確に示され、公庫担当者から「数字で信頼が見える化されている」と高評価。
結果、1,500万円の創業融資を獲得しました。
C社はその資金を元に法人として初年度から黒字を達成し、現在は外部資金調達にも成功しています。
これら3つの事例に共通しているのは、**「個人事業の延長ではなく、法人としての新しい目的を明確にしたこと」**です。
法人化の理由や資金の使い道が明確であれば、金融機関は「成長のための投資」として前向きに判断します。
法人成り後の創業融資は、「過去の実績 × 未来の計画」を両輪で示すことが成功のカギ。
つまり、“事業の継続性”と“成長意欲”を両立できる経営者こそ、融資を引き寄せることができるのです。
FAQ:法人成り後の創業融資に関するよくある質問
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法人成りしたばかりでも創業融資の対象になりますか?
-
はい、対象になります。
日本政策金融公庫や信用保証協会では、法人設立から2年以内であれば「創業期」として扱われます。
個人事業時代の確定申告書や売上データを提出すれば、「事業継続性がある」と評価されるため、法人化直後でも融資を受けやすくなります。
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個人事業時代の売上は、法人の実績として見てもらえますか?
-
はい、見てもらえます。
金融機関は「実態として同一事業を継続しているか」を重視します。
事業内容・顧客・仕入先が変わらなければ、個人時代の実績も法人の信用として評価されます。
その際、過去3期分の確定申告書や入金履歴の提出が有効です。
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法人成りのタイミングで創業融資を受ける場合、必要な書類は?
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主な書類は以下の通りです:
- 定款・登記簿謄本
- 法人設立届出書(税務署提出分)
- 過去の確定申告書(個人事業主時代)
- 売上・入金実績がわかる資料(通帳コピーなど)
- 事業計画書・資金繰り表
- 見積書・契約書(資金の使い道を示すため)
個人と法人の資金が明確に分かれていることを示すと、審査がスムーズになります。
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法人成り後すぐに赤字でも融資は受けられますか?
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可能です。
創業期の赤字は「投資段階」として理解されることが多く、黒字である必要はありません。
それよりも、資金の使い道と回収見込みを明確に説明することが重要です。
たとえば「設備投資により翌期から売上を20%増加予定」など、将来のキャッシュフローを示すことで信頼性が高まります。
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創業融資はどのくらいの金額まで受けられますか?
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日本政策金融公庫の新創業融資制度では、最大3,000万円(うち運転資金1,500万円まで)が目安です。
ただし、希望額すべてが認められるわけではなく、過去の実績・資金計画・返済可能性によって調整されます。
一般的には、初回申請では500万〜1,000万円程度が通りやすい金額です。
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保証人や担保は必要ですか?
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原則として不要です。
日本政策金融公庫の創業融資は、無担保・無保証人が基本。
信用保証協会付き融資の場合も、「経営者保証免除制度」が適用されることがあります。
ただし、事業の透明性や財務状況が不明確な場合は、保証を求められることもあります。
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法人成り前に借りた個人名義の借入はどう扱われますか?
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法人設立後も個人名義の借入が残っている場合、原則として個人債務として扱われます。
ただし、法人で事業を引き継ぐ際に「債務引継契約」を結ぶことで、法人側が返済責任を負うことも可能です。
金融機関に相談し、法人名義で借換を検討するのも一つの方法です。
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創業融資を受けやすくするポイントはありますか?
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次の3点を意識すると通過率が大きく上がります。
- 事業計画を具体的に書く(数字と行動で示す)
- 個人・法人の資金を完全に分離する
- 金融機関に誠実に情報提供する
特に「どのように利益を出すか」をロジカルに説明できれば、信頼性が格段に高まります。
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法人成りの時期は融資のタイミングに影響しますか?
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大きな影響はありません。
むしろ、法人登記直後に申請しても「実質的に事業を継続している」と判断されることが多いです。
ただし、法人化後すぐに決算期を迎える場合は、早めに申請しておくのがベターです。
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融資を受けた後、注意すべき点はありますか?
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融資後は、報告と説明を怠らないことが大切です。
特に、資金の使い道が計画どおり進んでいるかを定期的に共有することで、次の融資や追加支援につながります。
一度信頼を得た金融機関とは、長期的なパートナー関係を築くことが可能です。
まとめ:法人成りは「再出発」ではなく「進化」 ― 創業融資を味方につける経営戦略
個人事業主から法人へ移行する「法人成り」は、単なる形式変更ではなく、経営者としての責任と成長を象徴する大きな節目です。
そして、創業融資はその成長を後押しする強力なパートナーです。
多くの経営者が「法人化したばかりでは融資は難しい」と誤解しがちですが、実際には個人時代の実績をしっかり示せば、融資は十分に可能です。
重要なのは、金融機関が見ているポイントを理解すること。
それは「過去の信頼」と「これからの見通し」です。
つまり、法人としての登記日ではなく、事業の継続性・誠実な運営・将来の成長性こそが評価されます。
法人化することで、資金や取引が明確化し、経営者個人と企業を切り分けられるようになります。
この「透明性」が、金融機関の信頼を得る最大の鍵になります。
創業融資を受ける際に最も効果的なのは、「目的と計画を明確にすること」です。
たとえば、設備投資・人材採用・新店舗展開など、資金をどう使ってどんな成果を出すのかを具体的に説明できれば、審査は格段に通りやすくなります。
また、事業計画書を数字だけでなく“ストーリー”として伝えることで、担当者に「この経営者は信頼できる」と感じてもらうことができます。
融資の目的は「お金を借りること」ではなく、「事業を成長させるための信用を築くこと」です。
その信用を得るために、日々の経理・報告・経営判断の一つひとつが積み重なっていきます。
そしてその結果が、次の融資・取引拡大・人材採用など、企業成長の好循環を生み出すのです。
法人成り後の経営者に求められるのは、「個人の実績を法人の信頼に変える力」です。
税務・会計・契約・資金運用のすべてを見える化し、金融機関と誠実に対話する姿勢があれば、創業融資は大きな武器となります。
融資を受けることは、リスクではなく“信頼を数値化するプロセス”です。
最後に覚えておきたいのは、法人成りをした時点で「あなたはもう立派な経営者」だということです。
創業融資は、その新しいスタートラインを支えるために用意された制度です。
過去の努力を糧にし、未来を描く勇気を持つ経営者であれば、資金も信用も必ずついてきます。
法人化は終わりではなく、あなたの事業の「第二章」の始まりです。創業融資を味方につけ、数字と信頼で次のステージへ踏み出しましょう。
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