法人融資は赤字でも受けられる!審査の実態・成功事例・改善計画の立て方を徹底解説
法人経営をしていれば、赤字決算に直面することは決して珍しいことではありません。
新規事業への投資、景気変動による一時的な売上減、仕入価格の上昇――その要因はさまざまです。
しかし、多くの経営者が共通して抱える悩みがあります。それは「赤字では融資が受けられないのではないか?」という不安です。
かつては、銀行をはじめとする金融機関は「黒字=信用」「赤字=リスク」とみなす傾向が強く、赤字決算を出した法人は資金調達に苦労してきました。
ところが、近年の金融環境は大きく変化しています。
AIやデータ連携による審査手法の進化、クラウド会計の普及、そして金融庁の方針転換によって、「数字の裏側にある経営努力や将来性」も評価される時代になりつつあります。
実際に、赤字決算であっても資金調達に成功する法人は増加しています。
その背景には、金融機関が単なる数字だけでなく、事業の内容・改善計画・資金繰りの管理体制といった“経営の質”を重視するようになったことがあります。
本記事では、「赤字でも融資は受けられるのか?」という疑問に対し、
実際の金融現場の視点から、審査のポイント・必要書類・成功事例・対策法までを体系的に解説します。
「赤字=終わり」ではなく、「赤字=再成長への準備期間」として、どう融資と向き合うべきか――
その答えを、現実的かつ戦略的にお伝えします。
ぜひ、参考にしてください。
目次
赤字でも融資は受けられる ― 評価されるのは「数字」だけではない
結論から言えば、赤字決算でも法人が融資を受けることは可能です。
金融機関が融資を判断する際に重視するのは、単なる黒字・赤字の結果ではなく、その**「赤字の理由」と「今後の改善見込み」**です。
銀行担当者は決算書を見ただけで融資の可否を決めるわけではありません。
赤字の中身を分析し、「なぜ赤字になったのか」「次期はどのように改善されるのか」「資金の使い道は明確か」など、経営のストーリーを総合的に判断します。
たとえば、
- 新店舗オープンのための初期投資で赤字になった
- 設備投資による減価償却費が一時的に大きく計上された
- 仕入れ価格の上昇により一時的に原価率が悪化した
こうした“成長のための赤字”であれば、融資を受けられる可能性は十分にあります。
また、最近の金融業界では「事業性評価融資」という考え方が広がっています。
これは、財務数値だけでなく、事業内容・将来性・経営者の姿勢を評価する新しい審査手法です。
つまり、数字がマイナスでも「前向きな経営努力」を示せば、金融機関は融資を検討してくれる時代になっているのです。
大切なのは、赤字であることを隠すのではなく、赤字の原因を正直に説明し、改善策を具体的に示すこと。
経営者としての誠実さと行動力が伝われば、銀行担当者は「この法人は信頼できる」と判断します。
赤字でも資金を調達できる法人とは、「問題を正しく理解し、改善への道筋を示せる会社」です。
つまり、融資の鍵は「数字の裏にある経営姿勢」にあります。
なぜ赤字でも融資を受けられるのか ― 金融の評価基準が変わった
かつては、法人融資の世界において「赤字=融資否決」という固定観念がありました。
しかし現在、その常識は大きく変わっています。
金融庁が2014年以降に打ち出した「事業性評価融資」の方針によって、金融機関は数字だけでなく事業の中身や将来性を重視するようになったのです。
ここでは、その変化を理解するための4つの視点から理由を整理します。
「赤字=リスク」とは限らない時代に
赤字の原因がすべて「経営悪化」ではないことを、金融機関も理解しています。
たとえば、
- 設備投資や新事業立ち上げによる一時的な赤字
- 人材採用・教育などの先行コストによる赤字
- 減価償却などの非現金支出による会計上の赤字
こうした「未来の利益のための赤字」は、むしろ前向きな経営判断と評価されることがあります。
担当者は決算書の数字の奥にある意図を読み取り、「この投資が今後どのような収益を生むのか」を重視します。
銀行が見るのは「過去」より「未来」
従来、融資審査では過去3期分の決算書が重視されていました。
しかし現在は、過去の数字よりも将来のキャッシュフロー計画に重点が置かれるようになっています。
銀行が融資を行う目的は、企業を“救済する”ことではなく、“育成する”ことです。
そのため、赤字であっても「今後の収益改善が期待できる」と判断されれば、積極的に資金を供給します。
たとえば、赤字を出しているスタートアップ企業でも、クラウド会計データや受注残高などの「将来の売上見込み」を提示できれば、
キャッシュフローが回る見通しがある法人として評価されるケースも増えています。
経営者の「姿勢」と「説明力」が評価される
金融機関は、数字以上に「経営者の信頼性」を重視します。
特に赤字決算の企業の場合、担当者は必ず経営者にこう尋ねます。
「なぜ赤字になったのか?そしてどう改善するのか?」
この質問に対して、感情論ではなく具体的なデータと行動計画を示せる経営者は、評価が一変します。
たとえば「来期は原価を5%削減し、営業利益を黒字転換させるために仕入先を見直す」といった具体策を提示できると、
「この会社は赤字を冷静に分析し、改善できる体制がある」と判断され、融資につながる可能性が高まります。
政府系金融機関や保証制度の充実
近年は、日本政策金融公庫や信用保証協会などの支援制度が拡充され、赤字企業でも利用できる融資制度が整っています。
特に「経営改善計画型」や「再チャレンジ支援型」の融資では、赤字決算でも再建意欲があれば融資対象になります。
また、保証協会付き融資であれば、金融機関のリスクが軽減されるため、民間銀行も積極的に赤字法人への融資を検討する傾向にあります。
このように、赤字決算だからといって即座に融資を諦める必要はありません。
金融機関は、「利益」ではなく「返済可能性」と「事業の将来性」を見ています。
大切なのは、「今、何を改善し、どのように黒字転換を目指すのか」を明確に説明できるかどうかです。
赤字でも融資に成功した法人の実例 ― 「説明力」と「計画力」がカギ
赤字法人が融資を受けるには、「数字の裏側を正しく伝える力」が不可欠です。
ここでは、業種や状況の異なる3つの法人事例を通して、どのように信頼を勝ち取ったのかを見ていきます。
事例①:製造業A社 ― 設備投資による赤字でも融資に成功
熊本県で金属部品を製造するA社は、新工場の設立に伴い大型の機械を導入。
初年度は減価償却費が大きく、1,200万円の赤字決算を計上しました。
しかしA社はその投資の効果を具体的に数字で説明。
- 新工場の稼働率
- 生産効率の向上率
- 受注拡大見込み
これらを明確に示し、翌期からの黒字化シミュレーションを提出しました。
結果、金融機関は「戦略的赤字」と判断し、運転資金として2,000万円の融資を承認。
現在では売上が前年度比150%に伸び、計画どおり黒字転換を実現しています。
「投資による赤字は悪ではない。むしろ成長の準備期間として説明できれば評価される」
と銀行担当者は語っています。
事例②:IT企業B社 ― 一時的な赤字を改善計画で乗り切る
東京のB社は、システム開発を主力とする中小IT企業。
大型案件がずれ込み、当期の売上計上が翌期に持ち越されたため、経常赤字に転落。
それでも、**「受注済み案件の一覧」と「入金予定表」**を提示し、来期のキャッシュフローが改善する根拠を明確に示しました。
さらに、「外注費削減」「開発スケジュール管理の徹底」などの改善策を文書化したことで、銀行側は「再現性のある改善」と判断。
その結果、短期運転資金として1,000万円の融資が実行されました。
返済も計画通り進み、翌期には黒字復帰。
現在では、当初よりも有利な条件で継続融資を受けられるまでに信頼を築いています。
事例③:飲食業C社 ― コロナ禍の赤字でも前向きに融資獲得
福岡で複数店舗を展開する飲食業C社は、コロナ禍の影響で売上が50%減少し、大幅赤字に。
それでも、店舗改装・デリバリー導入・クラウドメニュー化などを進め、**「経営改善計画書」**を作成して銀行に提出しました。
加えて、**日本政策金融公庫の「新型コロナ特別融資」**を併用。
民間銀行との協調融資によって、合計3,000万円の資金を確保しました。
「正直に現状を伝え、改善の努力を見せることが一番の信用につながった」とC社の代表は振り返ります。
これらの事例に共通しているのは、赤字を隠さず、数字と計画で信頼を得た点です。
「なぜ赤字になったのか」「いつ黒字に戻すのか」を論理的に説明できれば、金融機関は前向きに融資を検討します。
つまり、赤字法人が融資に成功する鍵は、
- 現状を正直に伝えること
- 改善策を具体的に示すこと
- 計画を実行可能な形で提示すること
この3点に尽きます。
赤字でも、誠実な説明と計画性があれば、資金調達の道は必ず開けます。
FAQ:赤字法人の融資に関するよくある質問
-
赤字だと融資は絶対に無理ですか?
-
いいえ、赤字でも融資は十分に可能です。
金融機関は「赤字=NG」ではなく、「赤字の理由」と「回復の見込み」を見ます。
たとえば、新規事業への投資や一時的な売上減が原因であれば、将来の黒字化計画を提示することで前向きに審査されます。
重要なのは、「なぜ赤字になったのか」を自ら説明できることです。
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どんな赤字なら融資が通りやすいですか?
-
成長や改善のための一時的な赤字です。
具体的には、- 設備投資や新店舗出店に伴う初期コスト
- 研究開発費の増加による赤字
- 仕入れ価格の高騰に対応するための一時的損失
など、中長期的に利益回復が見込める赤字は「戦略的赤字」として評価されやすい傾向があります。
-
逆に、融資が難しくなる赤字とは?
-
改善の見込みが立たない「慢性的赤字」です。
例えば、数期連続で赤字が続いており、明確な対策や原因分析ができていない場合、金融機関は返済リスクが高いと判断します。
この場合はまず、経営改善計画書を作成し、赤字脱却の道筋を示すことが必要です。
-
銀行と日本政策金融公庫では、どちらが通りやすいですか?
-
一般的に、日本政策金融公庫の方が柔軟な審査を行います。
公庫は「再チャレンジ支援」「経営改善計画型融資」など赤字法人向けの制度が多く、事業の将来性を重視してくれます。
一方で、銀行融資を狙う場合は、保証協会付き融資を活用するのがおすすめです。
-
必要な書類は何ですか?
-
基本的には以下の書類が求められます:
- 決算書(直近2〜3期分)
- 試算表(最新月まで)
- 資金繰り表
- 経営改善計画書または事業計画書
- 納税証明書
- 登記簿謄本
赤字の場合は、特に**「改善計画書」や「キャッシュフロー予測表」**の提出が効果的です。
-
赤字を隠して申請しても大丈夫ですか?
-
絶対に避けましょう。
金融機関は税務署への申告データや信用情報を照合するため、虚偽の申告はすぐに判明します。
赤字を正直に開示し、そのうえで「どう改善するか」を誠実に説明する方が、結果的に信頼を得られます。
-
黒字に戻る見込みをどう説明すればいいですか?
-
数字で根拠を示すのがポイントです。
たとえば、- 「固定費を20%削減し、営業利益を改善する」
- 「新規契約3件で来期の売上を+1,000万円見込む」
など、具体的な行動計画+数値目標を提示すると、説得力が高まります。
-
リスケ(返済条件変更)中でも融資は受けられますか?
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可能性はあります。
リスケジュール中であっても、真摯に返済を続け、改善計画を着実に実行していれば、追加融資を検討してもらえるケースがあります。
特に保証協会や公庫では「再建支援融資」の制度があり、前向きな経営姿勢が評価されます。
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コンサルタントや税理士に相談した方がいいですか?
-
はい、専門家のサポートは非常に有効です。
経営改善計画書の作成や銀行交渉は専門的なノウハウが必要です。
税理士・中小企業診断士・認定経営革新等支援機関などに依頼すると、金融機関の信頼を得やすくなります。
-
赤字からの脱却に最も重要なことは何ですか?
-
「現状把握」と「即行動」です。
感情ではなく数字で現実を見つめ、改善のための行動をすぐに始めること。
そして、金融機関との関係を切らずに継続的に報告・相談を行うことが、赤字脱却と融資獲得の近道です。
まとめ:赤字は終わりではない ― 融資を受けて再スタートを切るために
赤字だからといって、法人が融資を諦める必要はありません。むしろ今の時代、金融機関は「赤字の理由」と「回復への道筋」を重視し、誠実に経営と向き合う企業を応援する姿勢を強めています。大切なのは、数字そのものではなく、数字に表れない“経営の姿勢”です。
赤字決算を出してしまったとき、経営者がまずすべきことは「現実を正確に把握すること」です。どの費用が増えたのか、どの収益が減ったのか、そしてそれが一時的な要因なのか構造的な問題なのかを冷静に分析する。そこから改善の手を打ち、明確な計画を示すことができれば、金融機関は前向きに耳を傾けてくれます。
融資担当者は、赤字の数字の奥に「経営者の誠実さ」と「再建への意思」を見ています。原因を隠そうとする企業よりも、問題を率直に認め、改善のための具体策を提示する企業の方が信頼を得やすいのです。実際、赤字を出しながらも事業計画書を添えて融資を受け、翌期に黒字化した事例は数多くあります。赤字は「失敗」ではなく「変化の途中」なのです。
また、融資を通じて得られるのは資金だけではありません。金融機関との信頼関係を構築することで、経営の相談相手を得ることにもつながります。定期的に経営状況を報告し、改善の成果を共有することで、次の融資や条件緩和の際に有利に働くこともあります。資金調達は一度きりの取引ではなく、長期的なパートナーシップの始まりです。
そして、赤字だからこそ使える公的支援制度もあります。日本政策金融公庫の「再チャレンジ支援融資」や、信用保証協会の「経営安定化資金」など、経営再建を支援する仕組みが整っています。これらをうまく活用しながら、資金面の不安を解消し、経営立て直しに集中できる環境を整えることが重要です。
最後に覚えておくべきなのは、「赤字=融資不可」という時代は終わったということです。今の金融機関は、数字の裏側にあるストーリーを見ています。つまり、融資とは「お金を借りること」ではなく、「信頼を形にすること」なのです。誠実な説明、現実的な改善計画、そして粘り強い行動。それが赤字法人が融資を勝ち取る最も確実な道です。
赤字は、経営者の覚悟と努力次第で「信頼を築くきっかけ」に変えられます。
融資は、その再スタートを後押しするための強力な味方です。
数字を恐れず、現実を見据え、未来を語る――それこそが、赤字の先にある本当の成長です。
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